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生体計測・福祉工学研究室(嶋脇研究室)

宇都宮大学 工学部機械システム工学科
      工学研究科機械知能工学専攻


非侵襲生体計測手法・装置の開発、福祉機器の開発・改良が主な研究テーマです。

JKA研究成果お知らせ



平成26年度 膝屈曲時に発生する足首カフ圧の長周期振動の解明補助事業

※この研究は,競輪の補助を受けて実施しました.  
http://ringring-keirin.jp/



研究の概要

 本研究では,右半身の上腕と足首をカフで圧迫することで脈波波形を得る.そして,その脈波波形に,フィルタ処理・FFT変換をかけることにより,その波形に含まれている周波数を求める.それと同時に,左足の足背動脈の速度を計測する.これらの計測は,椅子に座ってすぐの3分と,30分座り続けた後の3分の計2回測定する.また,様々な膝屈曲角度にて計測を行い,それぞれの、周波数や速度変化の値を比較する.さらに,左腕の静脈コンプライアンスを仰臥位にて5分間計測する.

研究の目的と背景

 本研究では,椅子を用いて,膝屈曲角度を変えながら上腕や下肢の血流の周波数を求めることで、深部静脈血栓症(エコノミー症候群)の症状の発生及び予防に関するデータを提供することを目的としている。それと同時に,座位の姿勢維持による下肢動脈の速度の変化・年齢における静脈コンプライアンスの違いについても計測し,検討を行った.

研究内容

 本研究では,膝屈曲角度を変えながらの,前腕・足首脈波波形と,その時の下肢動脈の速度変化についての計測,年齢と静脈コンプライアンスの比較についての計測の3つの実験を行った.その結果,次の結果が得られた.
  • 膝屈曲角度と足首脈波のピーク周波数との関係から,膝屈曲角度が増加すると,ピーク周波数は有意に増加し,血液の流れが悪化していた
  • 膝屈曲角度と収縮期動脈速度の関係から,計測姿勢維持0分後30分後の結果とも,膝屈曲角度の増加に伴い,収縮期動脈速度が減少する傾向が見られた.
  • 膝屈曲角度と収縮期動脈速度の関係から,計測姿勢維持0分後30分後の結果とも,膝屈曲角度の増加に伴い,収縮期動脈速度が減少する傾向が見られた.

本研究が実社会にどう活かされるかー展望

 今回の実験により、膝屈曲させたまま30分間座位を維持すると、足首カフ圧のピーク周波数の増加が認められた。一方、上腕カフではこのような現象が認められなかった。また、血流計測結果より、膝屈曲により動脈血流の減少が認められたが、姿勢維持時間には依存していなかった。今回の実験では静脈血流速を計測することが困難であったため、座位による足首カフ圧のピーク周波数の増加が静脈血流に関係しているかどうかは不明であった。しかし、何らかの血行障害が発生していると考えられる。
 今後、静脈血流速度を計測できれば、足首カフ圧の変化を説明できると思われる。座位による静脈速度と足首カフ圧の関係が示されれば、足首カフ圧を計測することで血行状態を推測できると考える。また、足首カフ圧を計測しなくとも、足置き(フットレスト)にセンサを取り付けて、それで代用することも可能と思われる。

本研究にかかわる知財・発表論文等

吉田和樹、嶋脇聡、中林正隆、酒井直隆:座位における下肢カフ圧変動と動脈速度に及ぼす膝屈曲角度の影響、日本機械学会関東支部第21期総会講演会論文集、No.10415(2015, 3), 横浜国立大学.


補助事業に係る成果物

脈波計測装置
脈波を計測するために,カフ圧迫するための圧迫装置と,圧迫装置を制御するためのプログラムを作成した.実験装置の概要を図1に示す.圧迫装置は、カフを膨張させるための空気用ポンプ、カフ内の空気を制御するための入口・出口側の2つの電磁弁、カフ内の圧力を測定するための小型圧力センサから構成された。圧迫制御プログラムはLabVIEW8.2を用いて作成した.このプログラムはまず任意の時間待機となる.その後入口側の電磁弁に信号を送り,電磁弁を解放させ,ポンプからの空気をカフへと送りだす.カフ内の圧力は圧力計により計測され,設定圧力になると入口側の電磁弁を閉じ,カフ内圧力を一定に保つ.
           
           図1 実験装置概要



          
                 実験風景(膝屈曲0°)