世界の高速鉄道を代表する新幹線は、利便性向上や到達時間短縮のために最高速度や曲線通過速度の向上を行ってきています。列車の速度が向上するとそれに伴い空気力学的な問題が顕著になってきています。代表的なものにトンネル微気圧波と言われている空気力学的な問題が発生しています。
その対策として、車両先頭部の形状を微気圧波の低減に考慮した設計がなされており、長い先頭部やカモノハシなどに例えられることのある先頭部など、独特の形状の先頭部を持つ車両が多く登場しています。
一方、微気圧波の対策を、すべて先頭車両で行おうとすると、とてつもなく長い先頭部が必要となり非現実的なものなります。そのため、効率的に微気圧波の低減を図るためには、トンネル緩衝工と言われている地上側の設備の対策も重要となります。これは建設されているトンネルの入り口に,フードのような囲いを設置し微気圧波の低減を行うものです。
私たちは、この列車先頭部の形状とトンネル緩衝工の形状の形状変化が流れに及ぼす影響や、微気圧波低減への効果を研究しています。
図1.新幹線の特徴的な先頭形状
出典:JR東海
図2.トンネル緩衝工
トンネル微気圧波とは、高速で走行する車両がトンネル突入の際に入り口で発生した圧力波が伝播し出口で「爆発音」として放射される現象です。下図の図3にトンネル微気圧波発生のメカニズムを示します。列車先頭部がトンネルに突入すると、トンネル内の空気が圧縮され、圧力が上昇します。この圧力上昇が圧縮波となり、トンネルの内部を伝播し、最終的に出口へ達し、周囲へ放射されます。このトンネル微気圧波が騒音や振動などの環境問題を引き起こしているため、低減する必要があります。
微気圧波が伝わる速度はほぼ音速(約340m/s)であり、列車の走行速度(約80m/s)よりも大幅に速いことから、微気圧波は前触れもなく急に発生します。この点が列車通過に伴う騒音や地盤振動などの他の環境問題とは異なる特徴であり、低減の重要性が高くなっています。
図3.トンネル微気圧波発生のメカニズム
出典:福田傑, 宮地徳蔵, 飯田雅宣, 微気圧波を小さくする地上設備, RRR, Vol.66, No.8, pp.10-13 (2009)
2024.7.21 鈴木湧人君 受賞
鈴木湧人君(博士前期課程)が,ベストプレゼンテーション賞を受賞しました。